退職を直属の上司に言いたくない——相手を替えて辞める方法

辞めたい。でも、あの上司に言うのだけは無理。

多くのサイトには「まず直属の上司に伝えましょう」と書いてあります。それができないから調べているのに、そう返される。

先に結論を書きます。退職を伝える相手について、法律上の決まりはありません。

目次

「まず直属の上司に」は、円満退職を前提にした助言です

なぜどのサイトも同じことを書いているのか。理由ははっきりしています。

円満に辞めることを目的にするなら、直属の上司を飛ばすのは確かに不利だからです。上司の面目を潰すことになる。残りの在職期間の空気が悪くなる。引き継ぎがやりにくくなる。だから「順序を守りましょう」と書かれます。

その助言は、円満退職を目指せる状況にいる人には正しいです。

ただ、この記事にたどり着いた方の多くは、そこにいません。上司が怖い。話が通じない。言えば潰されるとわかっている。円満に辞めることは、すでに諦めている。

その状態の人に「順序を守れ」は、何の解決にもなりません。

辞めることと、円満に辞めることは、別の目標です。

ここを分けないと、いつまでも動けません。

法律上、伝える相手の指定はない

期間の定めのない雇用契約であれば、退職の意思が会社に届いてから2週間で契約は終了します(民法627条1項)。

条文が求めているのは「会社に到達すること」だけです。誰に伝えるかは、書かれていません。

人事に伝えても、社長に伝えても、書面を郵送しても、会社に届いていれば成立します。

就業規則に「退職は直属の上司に申し出ること」と書かれていることはありますが、それは社内の手順であって、退職の成立条件ではありません。

なぜ言えないのか

言えない理由は、大きく2つに分かれます。どちらも、気の持ちようでは解決しません。

ひとつは、怖くて言えない。

日常的に強く言われている。機嫌次第で反応が変わる。何を言っても否定される。この状態だと、退職を切り出すこと自体が身体的にきつくなります。

もうひとつは、恩があって言えない。

よくしてもらった。目をかけてもらった。この人には裏切れない。怒られている場合とは逆に見えますが、言い出せないという結果は同じです。むしろ罪悪感が絡む分、二度目が出しにくくなります。

ナオ
私は前者でした。最後の半年は上司から日常的に叱責を受けていて、退職を伝えようとすると手が止まりました。実際に発信ボタンを押せず、会社へ向かう支度も途中で止まって、その日は欠勤の連絡だけメールで送っています。

そして、一度切り出して止められると、そこからさらに言えなくなります。

私の場合は、辞めたいと思ってから1ヶ月ほど相談を試みました。チャットで返事を先延ばしにされ続けて、話が進みません。そこで遠回しに伝えたときに返ってきたのが、これです。

「今辞められると困る」
「後任が決まるまで無理」
「仕事を投げるのか」

そこから二度目を切り出せないまま、時間だけが過ぎました。

引き止めの本当の効果は、説得することではありません。二度目を言えなくすることです。

上司を通さずに伝える方法と、その限界

直属の上司以外に伝える方法は3つあります。ただし、それぞれ限界があります。

人事・総務に伝える

一番現実的なルートです。メールで構いません。

お世話になっております。○○部の○○です。
一身上の都合により、○月○日をもって退職いたします。
直属の上司へ直接お伝えすることが難しい状況のため、人事の方へご連絡いたしました。
手続きについてご指示いただけますと幸いです。

限界は、人事が機能していない会社では使えないことです。

小さい会社には人事部そのものがありません。人事がいても、「まず上司に話してください」と差し戻されることがあります。人事と上司が近い関係だと、そのまま話が伝わって、余計にこじれることもあります。

上司のさらに上に伝える

部長、役員、社長。直属の上司を飛ばして、その上に伝える方法です。

限界は、結局その人から直属の上司へ話が下りることです。

順序を飛ばしたことが上司に伝わるので、その後の在職期間はやりにくくなります。辞めるまでの日数が短ければ問題になりませんが、1ヶ月以上残る予定なら覚悟が要ります。

退職届を郵送する

会社宛に退職届を郵送してしまう方法です。宛先は会社(○○株式会社 御中)で構いません。

受け取りを拒否されても、届いた時点で意思表示は成立します。 意思表示は相手が読んだ時点ではなく、読める状態になった時点で到達したことになります(民法97条)。

確実に届いたことを記録に残したい場合は、内容証明という方法があります(退職届を内容証明で送る方法)。

限界は、その後の連絡がどこかで発生することです。

退職日の確定。貸与品の返却。書類のやり取り。郵送だけで完全に終わることは、あまりありません。

嘘の退職理由は要りません

なんて言えば、揉めずに辞められますか。

その質問に、この記事は答えません。理由が要らないからです。

「揉めない退職理由の作り方」「引き止められない伝え方」といった記事があります。親の介護。結婚。体調不良。キャリアアップ。

そういう理由を用意する必要はありません。

作った理由には、必ず不安がついてきます。突っ込まれたらどうしよう。後でバレたらどうしよう。転職先が近所だったらどうしよう。嘘を守り続けるという仕事が、退職とは別に増えます。

そして、会社に退職理由を説明する義務はありません。

退職届に書くのは「一身上の都合により」だけで足ります。口頭で聞かれても同じです。「一身上の都合です」で通してください。

理由を言わないことは、失礼でも不誠実でもありません。むしろ逆です。理由を言うと、そこに反論の余地が生まれます。

「その不満なら改善する」
「異動で解決できる」
「今は転職市場が悪い」

理由を出した分だけ、引き止めの材料が増えます。言わない方が、話は短く済みます。

切り出せないまま時間だけが過ぎるなら

ここまでの方法で動かせるなら、それが一番早いです。人事へメールを1本、あるいは退職届を郵送する。それで手続きは始まります。

問題は、それすらできない場合です。

  • 人事がいない、いても上司に差し戻される
  • 一度伝えたが、止められてから二度目が言えない
  • 伝えた後に毎日顔を合わせ続ける自信がない
  • 辞めると決めてから何週間も経っているのに、何も動いていない

この状態で一番きついのは、上司に言えないことそのものではありません。辞めると決めているのに、辞められないまま、その職場に居続けることです。

ナオ
私は最終的に退職代行を使いました。早く辞めたかったのに、言えないまま、言っても止められて、ずるずる伸びていく。その時間が一番きつかったです。

代行を使えば、退職の意思の伝達も、退職日の調整も、その後のやり取りも、会社と話すのは代行側になります。直属の上司と退職の話をする場面が、一度も発生しません。

伝える相手を人事や上位者に替えても、あなたが自分で伝える限り、切り出す場面は残ります。代行が替えるのは、伝える相手ではなく、伝える人です。

円満退職ユニオンは労働組合なので、退職を伝えるだけでなく、退職日や有給、退職書類のやり取りまで代わりに進めます。あなたが上司と向き合う場面は、もうありません。

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直属の上司に言えないことは、辞められない理由にはなりません。伝える相手は替えられるし、伝える人も替えられます。

理由を作る必要もありません。「一身上の都合により」だけで足ります。

一度止められて動けなくなっているなら、次は口ではなく、記録に残る形で出してください。それも無理なら、出す人を替えてください。

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この記事を書いた人

かつては退職代行に否定的でしたが、自分が会社に電話できなくなり利用して退職しました。使って辞めた経験と、経験者への取材・公開情報の調査をもとに書いています。

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