退職後の私物を取りに行きたくない——郵送で受け取る手順と、断られたときの対処

辞めた会社のロッカーや机に、私物が残っている。でも取りに行きたくない。

顔を合わせたくないのは、おかしなことではありません。人間関係が原因で辞めた方にとって、退職後にその職場へ行くのは、辞める前と同じかそれ以上に負担の大きい行為です。

目次

結論:今日、メールを1本送れば終わります

やることは、どちらか一方です。

  • 取り戻したいものがある → 「着払いで送ってください」と伝える
  • いらない → 「処分して構いません」と伝える

どちらも言わずに置いておくのが、一番損をします。理由を先に書きます。

放置が一番損をする理由

会社は、あなたの私物を勝手に捨てられません

私物の所有権はあなたにあります。会社が無断で処分すると、退職者から損害賠償を請求される可能性があります。

だから会社は捨てられません。代わりに「取りに来てください」と言うか、「処分してよいという承諾をください」と求めてくることになります。退職者の私物を段ボールにまとめて保管し、郵送は断って取りに来るよう伝える会社があるのは、嫌がらせではなく、捨てられないから保管するしかないという事情です。

だから、あなたが何も言わない限り、保管が続きます

そして、保管にかかった費用は、あなたに請求できることになっています(民法702条)。

実際に請求されたという話は多くありません。ただ、「処分して構いません」の一文で0円で終わる話を、言わないというだけで、請求されうる状態に置き続けていることになります。

「いつまで保管してもらえるか」に目安はありません

ここは、はっきり書きます。

法律に保管期間の定めはありません。だから「3ヶ月くらいは大丈夫」といった一般的な目安も存在しません。期限を決めるのは会社です。入社時の誓約書や社内規程で「一定期間内に引き取りがなければ処分に同意したものとする」と定めている会社もあります。

逆に、連絡もせず取りにも来ない状態が長く続けば、あなたが所有権を放棄したとみなされる余地も出てきます。

つまり、待っていても、あなたに有利になる時間は一つもありません。時間が経つほど、処分される確率と、保管費用を請求されうる期間だけが増えます。

ナオ
私物のことは、退職の中では優先順位が下がりがちです。ただ、これは「送ってください」か「処分してください」のどちらかを1回送るだけの作業で、放置していても状況は良くなりません。ロッカーの中身を思い出せないなら、それも含めて次の手順で片付きます。

送ってもらう手順

1. 何が残っているかを書き出す

「ロッカーの中身を全部」ではなく、具体的にリストにしてください。マグカップ、書籍、充電器、上着、文房具。会社側が探しやすくなり、対応してもらえる確率が上がります。

2. メールかチャットで依頼する

電話は不要です。文字で残る方法にしてください。後から「言った・言わない」にならないためです。

お世話になっております。○月○日付で退職いたしました○○です。
ロッカーに私物が残っております。恐れ入りますが、着払いで下記住所へお送りいただけないでしょうか。
(残っているもの:マグカップ、書籍2冊、充電器)
ご都合が悪いようでしたら、処分していただいても構いません。

最後の一文を入れておくと、会社側が動きやすくなります。送るか捨てるかの判断を相手に渡せるので、返事が来ないまま止まる状態を避けられます。

3. 送料は着払いで依頼する

会社に送料を負担させるのは筋が通らないので、着払いで頼むのが無難です。

断られることがあります

ここが、多くの記事に書かれていない部分です。

会社に私物を送り返す法的な義務はありません。保管する義務も、梱包して発送する手間を負う義務もない。だから着払いでの送付を断ることもできます。「取りに来てください」と言われた場合、それ自体は不当な対応ではありません。

断られた場合の選択肢は3つです。

代理人に取りに行ってもらう — 家族や知人に頼みます。本人が行かずに済む方法としては、これが一番確実です。事前に「○月○日の○時ごろ、代理の者が伺います」と伝えてください。会社によっては委任状を求められるので、その場合は「私○○は、○○に私物の受け取りを委任します」という一文に日付と署名を入れたものを持たせれば足ります。

処分してもらう — 「処分して構いません」と伝えれば、それで終わります。会社としても保管し続けるより楽なので、応じてもらいやすい方法です。

もう一度、着払いで頼み直す — 一度断られても、送料負担がないことと、リストが具体的であることを示すと通ることがあります。

処分を頼む前に確認すること

処分を依頼する場合、戻ってこないと困るものが混ざっていないかだけ確認してください。

  • 印鑑
  • 資格証、免許証、証明書の類
  • 高価な私物(時計、アクセサリー、電子機器)
  • 個人的な書類、手紙

これらが含まれている可能性があるなら、処分ではなく代理人か郵送で回収してください。

ナオ
「全部捨てていい」と伝えたら本当に全部捨てられた、というのは当たり前のことなのですが、後から思い出して困る方がいます。処分を頼む前に、一度だけ書き出してみてください。

貸与品は、逆に自分から送る

私物を受け取る話と、貸与品を返す話は別です。そして貸与品は、こちらから送ってしまった方が早く終わります。

返していないものがあると、会社からの連絡が続く理由が残りますし、私物の返却の話も進みにくくなります。

保険証は、2026年から返すものが変わりました

ここは情報が古いまま書かれている記事が多いので、先に整理します。

従来の健康保険証は2025年12月1日で廃止されました。2026年8月以降は、マイナ保険証か資格確認書がないと通常どおりの保険診療を受けられません。つまり、そもそも会社に返す紙の保険証を持っていない方が増えています。

手元にあるもの 返却するか
資格確認書(マイナ保険証を持たない方に発行される紙) 会社へ返却します
資格情報のお知らせ(マイナ保険証利用者に届く紙) 返却不要です。自分で破棄して問題ありません
マイナンバーカード 返しません。自分のものです
旧・健康保険証(2025年12月で無効) 保険者によっては回収しない方針です。手元にあるなら会社に確認を

返すものがある場合でも、返さないと会社が困るわけではありません。回収できない場合は、その旨の届出を添えて資格喪失の手続きができるようになっています。困るのは自分の方です。

退職日の翌日以降は、退職した会社の保険では受診できません。使ってしまうと、保険者が負担した分(原則7割)を後から返還請求されます。3,000円払った診療なら、7,000円ほどの請求が後で来ることになります。

パソコン・スマートフォン

精密機器なので、緩衝材を使って梱包し、追跡番号の残る方法で送ります。電源アダプタやマウスなど、付属品が揃っているか確認してください。

勝手に初期化しないでください。会社の資産であり、データの取り扱いについて指示がある場合があります。判断に迷うなら、そのまま送って「初期化はしていません」と添えるのが安全です。

制服・社員証・鍵

洗濯して、他の返却物とまとめて送ります。詳しい手順は制服の返却の記事にまとめています。

手元にあるものは、一度に全部まとめて送ってください。後から「あれも返してください」と連絡が来ると、やり取りが増えます。

送るときに、実際につまずいたところ

ここは私自身がやった部分です。

私が返したのは、社員証・保険証・PC・充電器の4点でした。やってみて分かったことが3つあります。

送り先は、先に指定してもらってください。私は会社が指定した住所へ送りました。本社なのか、所属していた部署なのか、総務なのかは会社によって違います。確認せずに職場宛てに送ると、受け取れる人がいなかったり、転送されて所在が分からなくなったりします。

追跡番号が残る方法で送って、伝票の写真を撮っておいてください。私は伝票の写真を退職代行に共有しました。「送りました」と口頭で伝えるだけでは記録になりません。後から「届いていない」と言われたときに出せるものが必要です。

送料は自己負担でした。ここは私物と逆になります。受け取る私物は着払いで頼めますが、返す貸与品の送料は自分持ちです。4点で数千円ほどでした。

そしてもう一つ。私は退職代行を使っていましたが、箱に詰めてコンビニに持っていくのは自分でした。代行がやってくれるのは会社とのやり取りであって、梱包と発送は自分に残ります。ここを勘違いしていると、いつまでも荷物が動きません。

荷物ではなく、手続きごと残っている場合

先に正直に書いておきます。私物の受け取りだけが問題なら、退職代行は必要ありません。メールを1本送れば足ります。ここまでの手順で片付きます。

問題になるのは、残っているのが荷物だけではない場合です。

  • 出社しなくなったまま、退職届を出していない
  • 退職の意思は伝えたが、退職日が確定していない
  • 貸与品も、書類も、退職日も、全部そのままになっている

このとき、私物を取り戻しても何も終わりません。会社からの連絡が続くのは私物のせいではなく、退職の処理そのものが終わっていないからです。

自分で退職届を送れる状態なら、送ってしまえば動き始めます。それができない、会社と連絡を取ること自体が難しいという場合に、退職代行という手段があります。

この場合の価値は、料金の安さではなく、やり取りを丸ごと渡せることです。退職の意思を伝える、退職日を決める、私物の返却を依頼する、貸与品を返す段取りをつける、離職票などの書類を請求する——これを全部、会社と直接話さずに一つの窓口で進められます。私物の件だけで連絡し、書類の件でまた連絡し、と往復するのが一番きついところなので、そこがまとめて消えます。

一点だけ。私物と貸与品のやり取りは、退職が成立した後に発生します。ですので、退職を伝えて終わりの場所ではなく、その後の会社とのやり取りまで続けて扱える場所である必要があります。

私物の件で連絡し、貸与品の件でまた連絡し、書類の件でもう一度連絡する。この往復が一番きついところです。

円満退職ユニオンに頼むと、この連絡が全部その窓口に集まります。あなたに残るのは、箱に詰めて送ることだけです。

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私物を取りに行けないことに、罪悪感を持つ必要はありません。郵送でも、代理人でも、処分でも、終わらせ方はあります。

ただ、放置だけは避けてください。待っていても処分される確率が上がるだけで、あなたに有利になる時間はありません。「送ってください」か「処分して構いません」か、どちらか1行を今日送ってしまってください。

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この記事を書いた人

かつては退職代行に否定的でしたが、自分が会社に電話できなくなり利用して退職しました。使って辞めた経験と、経験者への取材・公開情報の調査をもとに書いています。

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