退職代行はありえない?——そう思っていた私が、実際に使った話

退職代行はありえない。

私もそう思っていました。退職くらい自分で伝えるべきだし、第三者に頼んで辞めるなんて無責任だと。お世話になった会社に何も言わずに辞めるのは、人としてどうなのかと。

この記事を読んでいる方も、同じ気持ちかもしれません。あるいは、「ありえない」と思いながらも、使うしかない状況に追い込まれているのかもしれません。

どちらの方にも、正直に書きます。

ナオ
私は退職代行を使う人の気持ちが分かりませんでした。数万円払って他人に辞めると伝えてもらう意味が理解できなかった。考えが変わったのは、自分が会社に電話できなくなったときです。
目次

「ありえない」と思っていた理由

退職代行が「ありえない」と感じる理由は、だいたいこの3つに集約されます。

  • 退職くらい自分で言うべきだ
  • 同僚や上司に迷惑をかける
  • 数万円払ってまで他人に頼むことではない

どれも間違っていません。自分で伝えられるなら、自分で伝えた方がいいのは事実です。

問題は、「自分で伝えられない状態」が実際にあるということです。

自分が当事者になって、わかったこと

私は中小企業の正社員として2年8カ月働いていました。退職を決める約1カ月前から、上司に相談する機会を作ろうとしていました。

チャットで「少しお話ししたいことがあります」と送りましたが、「今は忙しいから後にして」と何度か先延ばしにされました。一度だけ遠回しに退職を伝えたところ、「今辞められると困る」「後任が決まるまでは無理」「担当の仕事を投げるつもりか」と返されました。

その後、改めて退職を伝えるために電話をかけようとしましたが、発信ボタンを押せませんでした。会社へ向かう支度を始めても途中で手が止まり、その日は欠勤の連絡だけをメールで送りました。

このままでは無断欠勤が続く。そう思った日曜日の夜に、退職代行にLINEで申し込みました。

「ありえない」と思っていたサービスを使ったのは、それ以外の選択肢が見えなくなったからです。

使った結果——起きたことと、起きなかったこと

起きたこと

  • 翌朝、退職代行が会社に連絡し、退職が成立した
  • 会社と直接話さずに辞められた
  • 残っていた有給8日を消化できた
  • 退職届と貸与品は自分で郵送した
  • 離職票が届くまで約4週間かかった
  • サポート期間が終わっていて、書類の確認がすぐにできなかった
  • 辞めた後しばらく、同僚に対する罪悪感があった

起きなかったこと

  • 転職先にバレることはなかった
  • 損害賠償を請求されることはなかった
  • 会社からしつこい電話が来ることはなかった(1回だけ来たが、代行が止めた)
  • 「人生が終わる」ようなことは何も起きなかった
ナオ
使う前は「ありえない辞め方」だと思っていました。使った後は「ありえないほどあっけなく終わった」というのが正直な感想です。ただし、退職届も貸与品の返却も自分でやる必要がありました。全部お任せのサービスではありません。

退職代行を使っても解決しないこと

退職代行は「使えば全部終わる」サービスではありません。ここを誤解したまま使うと、後悔の原因になります。

  • 退職届は自分で書いて郵送する
  • 貸与品(社員証・保険証・PC等)は自分で梱包して送る
  • 離職票が届くまで待つ必要がある(届かない場合は確認が必要)
  • 健康保険と年金の切り替えは自分で役所で手続きする
  • 辞めた後の罪悪感は、代行が消してくれるわけではない

私の一番の後悔は、「退職できるか」と「料金」だけで業者を選び、退職後のサポート期間を確認しなかったことです。離職票が届かなかったとき、サポートが切れていて困りました。

「ありえない」で終わらせる前に

退職代行がありえないと思うこと自体は自然です。自分で辞められるなら、使う必要はありません。

ただし、もし今こういう状態にあるなら、検討する価値はあります。

  • 退職を伝えようとして、電話の発信ボタンが押せない
  • 出社の支度が途中で止まる
  • 上司に一度伝えたが、引き止められて辞められない
  • このまま無断欠勤を続けてしまいそう

こういう状態になっているなら、「ありえない」かどうかより、「このまま何もしないとどうなるか」の方が大事です。何も伝えずに欠勤を続けてバックレになると、退職代行を使うよりずっと面倒なことが起きます。

退職代行は逃げではなく、正式な退職手続きに戻すための手段です。

使うなら選び方だけ間違えない

私の経験から言えるのは、選ぶときに確認すべきは3つだけです。

  • 運営主体: 労働組合か弁護士が運営しているか。民間業者は退職の連絡しかできず、有給交渉ができない
  • サポート期間: 退職後に離職票が届くまで対応してもらえるか。短いと書類の問題を自分で処理する羽目になる
  • 交渉範囲: 有給消化や退職日の調整を会社と交渉できるか

私が今選ぶなら、この3つが揃っているところにします。とくに2つ目です。私はそこを確認せずに選んで、離職票が届く前にサポート期間が終わっていました。

どの運営主体だと何ができるのかは、安全な退職代行の選び方に整理しています。

ナオ
「ありえない」と思っていた私が使って、人生は終わりませんでした。ただし、全部が解決したわけでもありません。使うかどうかより、使うなら選び方を間違えないことの方が大事です。

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この記事を書いた人

かつては退職代行に否定的でしたが、自分が会社に電話できなくなり利用して退職しました。使って辞めた経験と、経験者への取材・公開情報の調査をもとに書いています。

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