派遣の仕事を辞めることになった。でも住んでいるのは寮なので、辞めると同時に住む場所もなくなる。しかも退去のときに費用を請求されるらしい——そう思って調べている方に向けて書いています。
先に申し上げると、私自身は中小企業の正社員で、寮に住んだ経験はありません。ですので以下は、寮の契約がどういう形になっているかという構造と、公開されている情報をもとに整理したものです。私が経験しているのは、退職した後に残る返却と精算の作業だけで、そこは後半で書きます。
先に結論
- 退去費用は、大半の人は0円か、最後の寮費の精算だけです。十数万円の請求が来るのは正常ではありません
- 退去期限は退職日から数日〜1週間です。1週間もらえたら長いほうで、2週間はまず出ません
- 荷物は引っ越し業者を呼ぶ量ではないことが多いです。家具家電付きの寮なら段ボール5〜10箱、宅急便で1〜1.5万円です
順に見ていきます。
退去費用は、ほとんどの人に請求されない
理由は、契約の形にあります。
派遣の寮の多くは、派遣会社が大家と賃貸契約を結び、それを社員に又貸ししている借り上げ物件です。つまり、あなたは大家と契約していません。敷金の精算も原状回復の話も、会社と大家の間で終わります。あなたのところへ原状回復の請求書が回ってくる導線が、そもそも存在しないことが多いのです。
さらに、社宅や寮は福利厚生として持たれているものなので、通常の生活で生じる範囲の傷みは会社が負担する扱いが一般的です。
では「退去費用を請求された」という話がなぜ出てくるのか。請求される側には、はっきりした型があります。
実際に請求されるのは、この4つだけです
1. 未払いの寮費
これが一番普通の「退去費用」です。最後の月の分を日割りか月単位で精算します。寮費が給与天引きの会社なら、最後の給与から引かれて終わります。金額は月の寮費以下です。
2. 鍵の紛失
シリンダーごと交換になるので、1万〜2万円。防犯性能の高い鍵だと3万円台になることもあります。逆に言えば、鍵を返すだけでこの金額が消えます。この記事の中で一番確実な節約はここです。
3. 明らかな破損
壁の穴、タバコの焦げ跡、水漏れの放置など、故意や不注意によるものです。箇所ごとの修繕で数千円〜数万円。壁紙の日焼けや家具を置いた跡は、これに入りません。
4. 置いていった荷物の処分費
黙って出ていった場合に発生します。部屋まるごとの処分になると数万円単位です。後述しますが、黙って出た人が金額として一番食らうのはここです。
契約書に最初から書いてある固定額は、それが上限です
寮によっては、契約書や利用規約に「退去時清掃費 ◯◯円」と金額が明記されています。この場合は最初から額が決まっているので、それを超える請求は出てきません。
「請求された人」と「されなかった人」の話が食い違うのは、たいていこの有無です。まず契約書か寮の利用規約を見て、固定額の定めがあるかどうかだけ確認してください。
これが来たら、内訳を出させていいものです
単身向けのハウスクリーニング代(相場3〜5万円)を個人に請求された — 借り上げ物件なら本来は会社と大家の間の話です。契約書に本人負担の定めがあるかを確認してください。
経年変化・通常損耗 — 日焼け、家具の跡、設備の古さです。ここまで含めて請求されている場合、金額は下がる余地があります。
「途中で辞めたから」という名目の請求 — 退去費用ではなく違約金の性質を持つものは、雇用契約ではあらかじめ金額を決めておくこと自体が禁止されています(労働基準法16条)。「契約書に書いてある」と言われても、書いてあること自体が有効になりません。
給料からの一方的な天引き — ここは分けて見てください。寮費そのものの天引きは、労使協定があれば適法です。一方、退去費用や損害の名目で一方的に差し引くのは、賃金全額払いの原則(労働基準法24条)に反します。同意した覚えがないのに引かれていたら、明細と契約書を突き合わせてください。
内訳の説明を拒まれる、天引きされた分を返してもらえないという場合は、労働基準監督署に相談できます。金額をめぐって争いになりそうなら、法テラス(0570-078374)でも相談を受け付けています。
ナオいつまでに出るのか——退職日から数日〜1週間
建前としては、退職日=退去日です。寮は仕事をしている期間の住まいなので、辞めた時点で入居の理由がなくなります。会社も次に入る人のために部屋を空けたい。
ただし実務では、退職日当日に放り出されることはまずなく、数日〜1週間の猶予が置かれるのが一般的です。期間工の寮のように遠方から赴任している人が多い職場では、最終出勤日の翌日か、その週末まで、という形が多くなります。
1週間もらえたら長いほうです。2週間はまず出ません。「次の家を決めてから」という順番は、寮では通りません。
だから、順番はこうなります。
辞める相談より先に、「いつまでに出ればいいか」を聞いてください。この一言だけなら、辞めると切り出す前でも聞けます。手元に契約書か寮の利用規約があるなら、そこに書いてあります。
寮に住んでいると、辞めるかどうかの判断が、いつのまにか住む場所を失うかどうかの判断にすり替わります。それで決断が遅れて、限界まで我慢してから急に動くことになる。ただ、退去の期限だけは、こちらの事情を待ってくれません。辞める話がまとまってから住まいを探し始めると、猶予の1週間がまるごと引っ越しの時間から消えます。
荷物——引っ越し業者を呼ぶ量ではないことが多い
ここが実は、退去でいちばん手間もお金もかかるところです。ただ、量を見誤っている人が多い部分でもあります。
家具家電付きの寮なら、自分の持ち物は衣類・寝具・PC・調理小物くらいです。段ボールにして5〜10箱。引っ越し業者に見積もりを取る前に、まず箱に詰めてみてください。だいたい思っているより少ないです。
送り方は、3つに分かれます。
送り先が決まっている場合(実家など) — 宅急便で送るのが一番安いです。160サイズで1箱2,000〜3,000円台、5箱で1万〜1.5万円程度に収まります。
家具や自転車を持ち込んでいる場合 — 単身者向けの引っ越しパックです。専用ボックス1本で3万円前後からが目安になります。
次の住所が決まっていない場合 — これが本当の問題です。送り先がないと荷物は動かせません。この場合は、箱単位で預けられる宅配型のトランクルーム(月数百円/箱から)に預けて、身一つで動くのが現実的です。荷物を人質にして寮に居続けると、その分の寮費が日割りで積み上がります。
布団は、送らずに処分したほうが安く済むことが多いです。送料が買い直しの費用を超えます。判断は早めにつけてください。
鍵と貸与品は、追跡が残る方法で送ってください
ここは私自身が経験したところです。
私は寮ではありませんでしたが、退職した後、社員証・保険証・PC・充電器の4点を会社の指定住所へ返しました。追跡番号が残る宅配便で送り、伝票の写真を退職代行に共有しています。送料は自分持ちでした。
このとき分かったのは、代行を使っても、梱包して発送する作業は自分に残るということです。退職の連絡は代行が代わりにやってくれますが、箱に詰めてコンビニに持っていくのは自分です。
寮の場合はここに鍵が加わります。「送りました」と口頭で伝えるだけでは記録になりません。追跡番号が残る方法で送って、控えを取っておいてください。前述のとおり、鍵ひとつで1万〜2万円の請求が動きます。
退去の立会いについても、借り上げ物件なら会社の担当者か管理会社が対応することが多いので、「立会いなしで、鍵は郵送で返す形にできますか」と先に聞いておくと、会社に顔を出さずに終えられます。
黙って出ていった場合に、何が残るか
連絡せずに寮を出る人もいます。住む場所と職場を同じ会社に握られている状態で正面から話をするのは、負担が大きい。それは分かります。
ただ、出ていっても終わりません。残るものを金額つきで並べます。
置いていった荷物の処分費 — 前述の4番です。部屋まるごとの処分になると数万円単位。黙って出ることで増える金額は、ここが最大です。しかも荷物は一定期間の保管の後に処分されるので、戻したいものがあるなら期限があります。
鍵の交換代 — 1万〜2万円。返していれば0円だったものです。
寮費 — 退去日が確定しないので、精算の計算が止まります。止まっている間、日割りが積み上がります。
連絡 — 派遣会社は安否確認と手続きのために連絡を続けます。緊急連絡先を登録していれば、実家に連絡が行きます。連絡が長引くのは、怒っているからというより、処理が終わっていないからです。
給料と書類 — 働いた分の給料を受け取る権利は消えません。ただし連絡を絶っていると振込や書類の発行が止まります。離職票が必要になったとき、結局こちらから連絡することになります。
次の仕事 — 同じ派遣会社からの紹介は止まります。寮付きの仕事を探し直す場合、ここが効いてきます。



なお、入寮したばかりで仕事が始まる前の待機寮から出る場合は、事情が少し違います。そちらは待機寮をバックレたらどうなるかにまとめています。
会社に行かずに退去まで終わらせる方法
やることを整理すると、こうなります。
- 退職の意思を伝える
- 退去日を決める
- 鍵と貸与品を返す
- 荷物を運び出す
- 寮費の精算をする
このうち、自分で動かないといけないのは4だけです。残りは連絡と書類のやり取りなので、会社に行く必要はありません。
自分で連絡できる状態なら、メール1本で1と2は動きます。鍵は郵送で返せます。
連絡そのものができない、寮費の請求でもめている、辞めさせてもらえないという場合は、退職代行という方法があります。退職の意思を伝えることに加えて、退去日の調整や貸与品の返却の段取りも、まとめて窓口にしてもらえます。寮の場合は辞める話と住む場所の話を同時に進める必要があるので、窓口が一つになる意味は大きいです。
ただ、一つだけ知っておいてほしいことがあります。
寮の精算は、退職が成立した後に来ます。私は退職自体は問題なく終わったのですが、離職票が届かず、3週間目に代行へ確認を頼んだところ、すでにサポート期間が終わっていて対応してもらえませんでした。結局、自分で会社に連絡しています。
寮は、書類よりもさらに長引く要素(精算、鍵、残置物)を抱えています。必要なのは、退職を伝えて終わりの場所ではなく、退去日の調整や精算の交渉まで扱って、それが退職の成立後まで続く場所です。
寮を出るとき、話が金額でもめると、そこから先は交渉ではなく請求への対応になります。内訳を出せと言っても出てこない、給料から勝手に引かれている——ここまで来ると、辞める話とは別の問題です。
ガイア法律事務所は弁護士なので、退職の手続きと、請求への対応を切らずに続けられます。払う必要のない請求に、一人で返事をしなくて済みます。
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ガイア法律事務所(弁護士)の対応範囲を見る寮に住んでいると、仕事を辞めることが、そのまま住まいを失うことと直結します。だから決断が遅れます。
ただ、退去の期限だけは待ってくれません。辞めると決めたなら、まず「いつまでに出ればいいか」だけ確認してください。そこが決まれば、荷物の送り先も、次の住まいを探す日数も逆算できます。他は後から片付きます。






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